2017年10月07日

地場産業の種 2 「八ヶ岳の風の加工品のルーツ」

私にとって、今お店で販売している加工品は、もともと日常生活にあった生活に根差したものばかりなんですね。
 加工品と呼んでしまえばそれまでなのですが、実はそれらは、もともとは日常の食事の常備菜や副菜や保存食で昔はどこの家でも当たり前に作っていたものです。
 季節のものや旬のものを無駄にせず、場所によっては野菜もなにもない厳しい冬を乗り切る知恵として作られていたものなのだと思います。
 もうじき長野県では各家で「お菜漬け」と呼んで野沢菜漬けが作られます。各家々にそれぞれの味があり、おばあちゃんの味、お母さんの味があります。塩で漬ける野沢菜漬けや醤油で漬ける切り漬け、それぞれが大きな樽や漬物桶一杯に「お菜漬け」を漬けて、春近くまでにそれを食べきっていきます。野沢菜は霜に当たるほどに柔らかくおいしくなり、野沢菜漬けは凍らせるほどにおいしくなる、そう言って凍るほど寒い冬に外にある野沢菜漬けの樽の氷の下にある野沢菜漬けを取りに行くのが長野県の冬の風景です。
 野沢菜漬けと同じ時期に漬けるのが沢庵で、沢庵も各家々にそれぞれの味があります。
 木曽にはすんき漬けという漬物があって、非常に優れた漬物なのですが、赤カブを使った漬物です。これもまた厳しい冬をできるだけ体に良いおいしい保存食で乗り切るための知恵としてある漬物です。
 ピクルスなどもそれらの漬物とまったく同じで、海外では野菜が不足する時期に野菜を補うために作られていた保存食です。
 私の母は、もともとが宮城県の田舎で育ったせいか、日々の生活はそういった常備菜や副菜、保存食を常に作り続けている人でした。そのせいか、家の食卓はいつも季節の食に彩られていたように思えます。
 2月の節分の後は豆まきで余った炒り大豆を使った鉄火味噌が食卓に並び、春先の山菜が手に入れば塩漬けにして保存し、ふきのとうはフキ味噌にし、フキの葉が出てくる頃には山の細いフキをキャラブキにしていました。山椒の葉は佃煮にし、初鰹が出ると鰹の角煮。イチゴが出始めると必ず「まだ駄目」と母は言っていました。小さなジャム用のすっぱい安くてひと箱に何パックも入っているイチゴが出る時まで待つようにと言われました。
 この小さなジャム用のイチゴが出始めると母のイチゴジャム作りの季節がやってきます。八ヶ岳の風のジャムはこの母のジャムが基本です。小さなイチゴが丸ごと入った贅沢なイチゴジャムが母のジャムでした。そのレシピ通りに作っているのが八ヶ岳の風のジャムです。
 シソが若い実を漬け始めるとシソの実の塩漬けやみそ漬け。甘夏が食べごろになると甘夏の砂糖漬けや蜂蜜漬け。叔母は甘夏の皮を使ってマーマレードを作っていました。
母の得意技が残った刺身を醤油と味醂と酢で漬け込んで翌日のおかずに変身させること。
 秋になると仙台の叔母はキノコの佃煮を作りそれを送ってきました。母はリンゴを見極めて紅玉のすっぱくて小さな玉が出るとコンポートや焼きリンゴなどの料理にしていました。
 11月ごろからは白菜の季節になり、母は山東白菜でなければダメと言って白菜漬けを作り始めました。この頃からキムチ漬けも本格的になってきます。
 新物の乾豆が出回り出すと煮豆のシーズンに入ります。おいしい豆の甘煮が食卓に並び始めます。
 沢庵、野沢菜漬け、白菜漬け、カブ漬け、切り干し大根の煮物、豆の甘煮、炒り豆腐、卯の花の炒り煮、そういったもので食卓の常備菜や副菜が彩られ、鍋物などもおいしい季節になってきます。
 本当は、秋から冬にかけてが本当に美味しいものが出そろう季節なんですね。
 そして年末のおせち料理こそがそのクライマックス。
 私の家では、おせち料理こそが家の料理の真価が問われるものと考えていました。
おせち料理には力が入ります。常備菜、副菜、保存食の結集がおせち料理です。
 海が遠い長野県などでは塩ブリが保存食として使われていましたので、おせち料理にはブリが並びます。
 各地域や各家庭がどれほどうまく保存食を使って贅沢な料理を作るかがおせち料理の基本です。ですからおせち料理には乾物が主流になっているんですね。
 新潟では雪にさらした鷹の爪を使って加工品にしたかんずり、関西では丹波の黒豆や丹波の乾燥して甘味を増したカチグリなど。各地域、各家庭が日々の食卓をより良いものにするための工夫や知恵から生まれたものが加工品のルーツだと私達は考えています。
 そういった生活の知恵や工夫から生まれたものこそが地場産業の始まりであり種であると思っています。
 中華料理の醍醐味は、特に広東や台湾が主流ですが、乾燥したツバメの巣、乾物のフカヒレや乾物のアワビなど、乾物を戻したものが最も贅沢な料理のひとつになっています。
 近年は行政指導のトップダウン方式の無理やりに名物や名産品を作るのが主流になっていますが、そういった無理強いからは決して良いもの、持続可能なものは生まれないと思っています。地域の生活に根差した無理のない、自然体の生活の中から生まれたものしか根差していくものはないと私達は考えています。
 もともとが生活の知恵から生まれたものが加工品のルーツであると私達は考えます。
 それが八ヶ岳の風の加工品のルーツであり八ヶ岳の風が考える地場産業のあり方です。

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posted by ねこ at 23:10| Comment(0) | 日記
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